「農業従事者の減少・高齢化で収益が安定しない、作業効率を上げられない」そんな農業の課題を解決するのが、AI技術の活用です。

最近は「スマート農業」という言葉を聞くようになりましたね。
本記事では、次のような方に向けてAIを活用したスマート農業のメリットやデメリット、実証済みの成功事例と具体的な導入方法を詳しく解説します。
2025年現在、国や自治体が積極的に支援制度を拡充し、スマート農業の導入が加速しています。本記事を読むことで、あなたの農業経営を飛躍的に改善するためのAI活用の知識が身に付きます。

僕も農業に携わっている人間なので、AIを活用できる場面はないかなぁと日々考えています。
ぜひ本記事を参考にして、AIを活用したスマート農業の実践を検討してみてはいかがでしょうか。
本記事のポイントは次の通りです。
AI導入で農業はどう変わる?スマート農業の現状と動向

スマート農業の市場は急拡大しており、AIの活用で農業は劇的に変わりつつあります。2025年には日本のスマート農業市場が3,885億円に到達すると予測され、成長ぶりに驚かされます。
農業従事者の高齢化と人手不足が深刻化するなか、IoTセンサーやドローン、AI解析による精密農業が課題解決の切り札となっているためです。実際にデータ活用農業の普及率は26.1%に達し、ロボットトラクターの自動運転や、画像解析による病害虫の早期発見などが実践されています。
全農業経営体数から見る普及率は26.1%にのぼります。前年と比較した増減率は個人で6.9%増、団体では6.5%増です。
引用元:ヤンマー|スマート農業とは?IT化の事例と気になる将来性を簡単に解説!(最終閲覧日2025年8月24日)

うーん、まだ「すごく進んでいる」とは言えない状況ですかね。
従来の勘と経験に頼る農業から、科学的なデータ農業への転換が進んでいます。技術革新により、農業の生産性向上と持続可能性が同時に実現できる時代が到来しています。
スマート農業にAI活用が求められる社会的背景とは

なぜ今、スマート農業にAI技術の導入が急務となっているのでしょうか。日本の農業は深刻な課題に直面しており、解決策として期待されているのがAI活用です。

田舎暮らしをしながら農業に関わる僕も、課題を肌で感じています。
ここでは、AI導入が求められる4つの背景を詳しく見ていきましょう。
農業従事者の高齢化と慢性的な人手不足
日本の農業が直面する最も深刻な課題は、農業従事者の急激な減少です。基幹的農業従事者は2050年までに約100万人減少し36万人となる推計で、これは現在の約3分の1という驚きの数字です。
基幹的農業従事者は2050年までに約100万人減少し36万人となる推計。より多くの担い手の確保とともに、少ない担い手への農地の集積・集約化が一層必要になるとしている。
引用元:JA.com|基幹的農業従事者 2050年36万人 100万人減 農地集約 喫緊の課題 全中が中長期見通し推計(最終閲覧日2025年8月24日)

今でも担い手不足と言われているのに、かなり深刻な数字ですね。
農業従事者の減少が続けば、次のようなリスクが想定されます。
高齢化で熟練農家の技術が伝承されないまま消えていく危険性も指摘されており、まさに農業存続の危機といえるでしょう。こうした状況で、AIを活用したスマート農業は、少ない人手でも効率的な農作業を可能にする切り札として注目されています。
データに基づく農業により、経験に頼らない安定した生産が期待できるのです。
気候変動や自然災害による収量安定ニーズ
近年の異常気象や自然災害の増加により、農作物の収量安定が困難になっています。

僕が住む秋田でも、予想外の天候変化に農家の方々が苦労されているのを目の当たりにしています。
AI技術を活用すれば、気象データや土壌データをリアルタイムで解析し、最適な栽培管理が可能になります。病害虫の早期発見や適切な防除タイミングの判断、水分管理の自動化など、環境変化に柔軟に対応できる精密農業の実現により、安定した収量確保と品質向上が期待されています。
農薬や肥料削減による持続可能な農業実現
環境負荷軽減と持続可能な農業への転換は、世界的な課題です。AIによる画像解析技術では、ピンポイントで病害虫を検出し、必要最小限の農薬散布が可能になります。また、土壌センサーとAI解析を組み合わせることで、作物の成長段階に応じた最適な施肥量を算出できるため、肥料の使い過ぎを防げます。

農薬や肥料の値上がりも激しく、できるかぎり最小限の使用におさえていニーズもありそうです。
AIを駆使した技術により、生産コストの削減と環境保護の両立が実現でき、消費者からも支持される安全で高品質な農産物生産が可能になります。まさに次世代農業の理想形といえるでしょう。
政府によるスマート農業推進
政府は2025年までに農業の担い手のほぼすべてがデータを活用した農業を実践する 目標を掲げ、強力にスマート農業を推進しています。
現場でのデータ活⽤とスマート農業⼈材の更なる創出を図ることで、政策⽬標「2025年までに農業の担い⼿のほぼ全てがデータを活⽤した農業を実践」の実現を⽬指す。
引用元:農林水産省|スマート農業推進総合パッケージ|2ページ(最終閲覧日2025年8月24日)
2025年度からは「スマート農業技術活用促進集中支援プログラム」など新たな補助金が新設・拡充 され、導入支援が手厚くなっています。
農業経営者にとっては、これほど追い風が吹いている時期はないでしょう。国を挙げた取り組みにより、技術開発からコスト削減、人材育成まで総合的な支援体制が整備されており、AI活用への参入障壁が大幅に下がっています。

農業の生産者不足問題は国も主要課題として捉えているようです。
AI導入で実現できるスマート農業のメリット6選

AI技術の導入により、スマート農業は従来の農業にどのような革新をもたらすのでしょうか。収穫量の増加と質の向上が期待されており、効果は多岐にわたります。

秋田の田舎で農業に携わる僕も、自動運転のトラクターなどに乗ったことがあり、便利さに驚きました!
ここでは、AI導入で実現される具体的な6つのメリットを詳しく解説します。
作業自動化で労働負担を軽減できる
スマート農業の最大のメリットは、重労働からの解放です。AIを搭載したロボットトラクターが自動で耕耘や播種を行い、農業従事者の負担を軽減し、収穫の効率化を実現します。
ロボットトラクタと有人トラクタの2台協調作業により、オペレータ1人当たりの作業時間が平均で32%短縮。
引用元:農研機構|スマート農業技術の実証・分析|17ページ(最終閲覧日2025年8月24日)
ドローンによる農薬散布や水管理システムの自動化により、これまで人手に依存していた作業が劇的に省力化されるのです。

農業ってスローライフなイメージがあるかもしれませんが、わりとハードワークもあります。僕も結構体を酷使しています。
特に高齢農業者にとって、身体的負担の軽減は農業を続ける大きな動機となり、長期的な農業経営の持続可能性が向上します。
水・肥料・農薬の使用量を最適化できる
AIによるデータ解析で、水や肥料、農薬の無駄づかいを大幅に削減できます。土壌センサーと連携したAIシステムが、作物の成長段階や土壌状態をリアルタイムで監視し、必要な分だけを適切なタイミングで供給します。

畑が遠いと、作物や土の状況を確認しに行くだけでもひと手間です。
画像認識技術により病害虫をピンポイントで特定し、必要最小限の農薬散布が可能になるため、環境負荷も軽減されます。生産コストの削減と環境保護の両立が実現し、持続可能な農業経営を支える重要な技術となっています。まさに一石二鳥の効果が期待できるでしょう。
収穫量や収穫時期の高精度な予測が可能
AIの分析能力により、収穫量と最適な収穫時期の予測精度が飛躍的に向上します。気象データ、土壌データ、作物の生育状況を総合的に解析することで、従来の経験則では困難だった高精度な予測が実現されています。

最近は気温や雨の降り方が、大きく変わってきていると感じます。AIで気候変動に対応できると、収量や品質の安定化が格段に進むはずです。
技術の進歩により、出荷計画の立案や労働力の配分、販売戦略の最適化が可能になり、農業経営の安定性が大幅に向上します。また、収穫タイミングの最適化により、品質の良い農産物を確実に市場に供給できるため、農家の収益向上に直結する重要なメリットといえるでしょう。
農作物の品質向上と出荷精度の向上
AIの画像解析技術により、農作物の品質管理が革命的に進化しています。カメラとAIを組み合わせた選果システムが、サイズ、色、形、傷の有無を瞬時に判定し、高品質な農産物だけを選別します。

人の目でひとつひとつ選別するのは、限界がありますからね。スピードと選別の品質のバランスがむずかしいところです。
また、栽培過程でもAIが最適な環境制御を行うため、糖度や栄養価の高い作物を安定して生産できるようになりました。品質向上と農業経営の最適化を実現することで、市場価値の高い農産物の出荷が可能になり、農家の収益性向上に大きく貢献します。
日本スマート農業市場は、2023年から2032年までに2億1300万米ドルから5億8120万米ドルまでの収益増加が見込まれ、2024年から2032年の予測期間にかけて年平均成長率(CAGR)が 11.8%で成長すると予測されています。
引用元:株式会社レポートオーシャン|japan smart agriculture market(最終閲覧日2025年8月24日)
消費者にとっても安全でおいしい農産物が手に入るメリットがあります。
技術継承や後継者育成に役立つ仕組み
“水やり10年”というように、経験がものを言うとされてきた農業において、AIは貴重な技術継承の手段となります。
植物の水やりは奥が深く、上手に水やりができるようになるには10年かかると言われることがありますが、学ぶということ、知識を身につけることも継続する努力が必要になります
引用元:アイデンティティ・パートナーズ|適切な水やりのタイミングについて考える(最終閲覧日2025年8月24日)

一人前の水やり技術を身に付けるのには、10年かかるという意味です。要はさまざまな要素を見極める感覚や、技術の習得には時間がかかるということですね。
熟練農家の判断基準をデータ化し、AIが学習することで、経験の浅い農業者でも高品質な農作物を生産できるようになります。また、データに基づいた農業により、勘に頼らない科学的なアプローチが可能になるため、若い世代にとって農業がより魅力的な職業として映るでしょう。
AI技術により、農業の高度な技術や知識が失われることなく、次世代へと確実に継承されていきます。
効率化によるコスト削減と利益確保
AI導入による作業効率化は、直接的なコスト削減効果をもたらします。自動化により人件費を削減し、最適化された資材使用により無駄なコストをカットできます。また、収穫量の向上と品質向上により、売上増加も期待できるため、投資対効果は非常に高いといえるでしょう。
初期投資は必要ですが、2025年度から新設・拡充された補助金制度を活用すれば、導入コストを大幅に軽減できます。

詳しい補助金制度については、後述しますね。
長期的には農業経営の安定化と収益性向上により、持続可能で魅力的な農業ビジネスモデルの構築が可能になります。
AI活用のスマート農業に潜むデメリット4つ

スマート農業には多くのメリットがある一方で、AI導入には無視できないデメリットも存在します。初期費用の高さや人材確保・育成の課題、機器間の互換性の低さなどが主な問題として指摘されています。ここでは、AI活用の現実的な4つの課題を詳しく解説します。
導入コストやシステム維持費の負担
AI技術を農業に導入する際の大きな課題となるのが、コスト面です。AI搭載の農機やセンサー類は数百万円から数千万円と高額で、中小規模の農家にとって初期投資の負担は深刻な問題となります。
AIシステムの導入には、数百万円から数千万円の初期投資が必要です。特に、スマート農業用のセンサーや自動運転機器の導入は高額であり、中小規模の農家にとっては大きな負担となります。
引用元:Hakky Handbook|農業におけるAI活用法と課題|持続可能な未来を目指して(最終閲覧日2025年8月25日)

簡単に投資できる金額ではありませんよね…。
また、導入後もシステムのメンテナンス費用やソフトウェアの更新費用が継続的に発生するため、長期的な資金計画が必要です。ただし、2025年度から新設・拡充された補助金制度を活用すれば負担軽減が可能です。投資回収期間を慎重に検討することが重要でしょう。
AI知識・操作スキルの習得が必要
スマート農業の導入には、従来の農業技術に加えて新たなデジタルスキルの習得が求められます。
AIシステムの操作方法、データの読み方、機器のメンテナンス方法など、覚えることが山積みです。特に高齢の農業従事者にとって、これらの技術習得は大きなハードルとなる場合があります。

システムの不具合やトラブル時の対応も必要で、「機械が故障したらどうしよう」という不安もありそうです。
ただし、最近は操作が簡単になった機器も増えており、サポート体制も充実してきているため、段階的な導入で対応可能です。
収集データの品質や信頼性の課題
AIの性能は入力されるデータの品質に大きく依存するため、不正確なデータでは適切な判断ができません。センサーの故障や設置位置の問題、気象条件による影響などでデータに誤差が生じる可能性があります。
また、農場ごとに土壌条件や気候が異なるため、他地域のデータをそのまま活用できない場合もあります。データの蓄積には時間もかかるため、導入初期は精度が低い可能性も。継続的なデータ検証と改善が欠かせない課題といえるでしょう。
農作物品質への影響やリスクの懸念
AI主導の農業では、システムの誤判断や故障により農作物の品質に悪影響を与えるリスクがあります。
また、従来の手作業による細かな調整ができなくなることで、農産物の個性や特色が失われる可能性も指摘されています。「AIに任せきりで大丈夫なのか」という不安を持つ農家さんも多く、消費者からも「自然さが失われるのでは」という声があります。
あるAIチャットボットが病害虫の種類を誤って判別し誤った防除法を提案した結果、被害が拡大してしまった、といった例も報告されています。
引用元:Mudness Partners|日本農業のDXの現状と課題:生成AI活用と現場経験から見る未来(最終閲覧日2025年8月25日)
人間の経験と判断力とAI技術のバランスを取ることが、品質維持のカギとなります。
AIを農業導入する際に知っておきたい活用ポイント

スマート農業のAI導入を成功させるには、適切なアプローチと計画が欠かせません。専門家の活用やリースの利用により、AI導入のリスクやコスト負担の軽減が可能とされています。

田舎で農業の現場を見てきた僕も、計画的な導入は重要だと思います。
ここでは、AI活用を成功に導く6つの重要ポイントを解説します。
現状の課題把握と導入目的の明確化
AI導入の第一歩は、自農場の課題を正確に把握し、導入目的を明確にすることです。労働力不足なのか、収量向上なのか、品質管理なのか、目的によって必要な技術は大きく異なります。

たとえば、現場の課題と導入の組み合わせには次のようなものがあります。
現場の課題 | AI導入の目的・対策 | 効果・期待される成果 |
収穫作業の労働力不足 | 収穫用ロボット導入で労働時間削減・作業自動化 | 作業時間30%削減、人手不足解消、収量向上 |
収穫量や品質のばらつき | ドローン撮影+AI画像解析による生育状況把握 | 収量15%向上、廃棄ロス削減、品質の均一化 |
灌漑・施肥の非効率 | AIによる精密灌漑システムで水量・肥料最適化 | 用水量20%削減、肥料使用量15~20%削減 |
病害虫被害の早期発見・対応 | AI画像診断+リスク分析による病害虫検知 | 農薬使用量削減、被害最小化、高品質作物 |
出荷計画の不確実性 | AIによる収穫量予測・出荷計画支援 | 販路・物流の安定化、計画的な農業経営実現 |
生育管理の属人化・経験依存 | IoTセンサー+AI解析で環境データリアルタイム管理 | 判断の標準化・省力化、安定生産 |
目的が曖昧なまま導入すると、期待した効果が得られず、高額な投資が無駄になってしまう可能性があります。
補助金やリース活用でコスト削減を図る
2025年度から「スマート農業技術活用促進集中支援プログラム」など新たな補助金が新設・拡充されており、導入コストを大幅に削減できる環境が整っています。

2025年8月時点では、次のような補助金が活用できます。
補助金・助成金名 | 内容・対象 | 補助率・上限金額 | 備考・特徴 |
スマート農業・農業支援サービス事業導入総合サポート緊急対策事業(第4次公募) | 農業用ドローンやICT機器の購入・リース費用支援。農業支援サービスの新規立上げやサービス拡大支援。 | 経費の1/2以内・スマート農業機械を導入する場合は3,000万円、複数都道府県へサービスを提供する場合には5,000万円 | 2025年7月8日〜8月22日公募。多様なサービス事業育成も含む。 |
IT導入補助金 | ITツール・ソフトウェア導入支援。 | 最大2/3以内・上限450万円 | 農業のデジタル化促進に活用可能。 |
環境保全型農業直接支払交付金 | 環境保全に寄与する農業活動の支援。年間最大200万円。 | 補助対象の活動種別による(1ヘクタールあたり数千円程度) ※予算枠超過の場合は調整が行われる | 持続可能な農業に対する支援。 |
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者の経営改善のための設備投資や販路開拓支援。 | 2/3以内・最大200万円 | 農業以外も対象、農業関連企業にも適用可能。 |
各自治体において、独自にスマート農業関連補助金を設けているケースもあります。
補助金・助成金名 | 内容・対象 | 補助率・上限金額 | 備考・特徴 |
神奈川県 | スマート農業推進事業 | 補助率1/3以内・上限100〜500万円 | スマート農業機器の導入・設置、データ分析 |
宮崎県 | スマート農業働き方改革産地実証事業 | 実証支援補助率1/3以内、技術習得定額 | 働き方改革を狙った産地モデルの実証支援 |
秋田県・北海道 | 公募型補助金 | 補助率1/2(定額)、上限1,500万〜3,000万円 | 広域的なスマート農業機械、システム導入支援 |

国と自治体の補助金は、基本的には同一経費や同一事業での重複助成は原則として禁止されています。
用途や経費を分けて明確にし、事前に窓口で相談したうえで申請することがポイントです。
補助金の申請期間や条件は限られているので、早めの情報収集と準備が成功のカギとなります。
また、リースやレンタルを活用すれば初期投資を抑制し、メンテナンス費用も含めた月額費用で利用可能です。「まずは試してみたい」という農家さんには、特に向いています。レンタル先は地域のJAや農機具販売店に問い合わせたり、スマート農業関連の展示会や商談会で情報収集するのがおすすめです。
小規模導入から段階的に拡大する
いきなり大規模なAI導入を行うのではなく、小さな範囲から始めて段階的に拡大することが重要です。

本当に効果があるのか不安な面もあると思います。
コストをかけずに、少額・小規模から試してみるのがおすすめです。
段階的な導入により、操作方法の習得や運用ノウハウの蓄積を無理なく進められます。また、初期投資のリスクを最小限に抑えながら、実際の効果を数値で確認できるため、次の投資判断も的確に行えます。
「小さく始めて大きく育てる」という考え方が、AI導入成功の秘訣といえるでしょう。
専門家のコンサルや研修サービスを活用
AI技術は複雑で専門性が高いため、専門家やチームをプロジェクトベースでアウトソーシングし、専門知識を活用することでAI導入の成功率を高めることが可能です。農業系のコンサルティング会社や機器メーカーが提供する研修サービスを活用すれば、効率的にスキルを身につけられます。
研修名称・提供者 | 内容・特徴 | 対象・目的 |
耕種スマート農業研修会2025(JA全農とちぎ) | スマート農業機器の操作体験、栽培技術や高温対策の実践的情報提供 | 現役農家向け、スマート農業導入のための技術習得 |
令和6年度スマート農業人材育成研修(埼玉県) | 経営分析に基づく導入計画策定、スマート技術のメリット解説 | 基幹的農業従事者、効率化・省力化推進 |
はじめてのスマート農業機械操作研修会(岐阜県) | 農業用ドローンの飛行操作、航空法や農薬取締法の基礎講義、農業機械の基本点検等の実習がセット | 副業志望や未経験者含む農業関係者、操作体験を通じてスマート農業導入促進 |
スマート農業セミナー(宇部市) | 最新スマート農機の実演・操作体験、ICT活用による作業効率化の紹介 | 現役農家、機器操作の理解と農作業の省力化推進 |
農業機械研修(福島県) | 基礎的な安全運転操作からスマート農業用ロボットトラクター、ドローンの操作技術向上を目指す | 現役農家や就農希望者、専門的な機械操作技術習得 |
近隣の先進農家や農業法人での実地研修も有効で、実際の運用方法や失敗例から学習が可能です。上記のような研修で、基本操作技術の習得はもちろん、法律や安全面の知識、機器のメンテナンス方法についても学習するチャンスがあります。
データ収集・分析体制を整備して活用
AI技術の効果を最大化するには、質の高いデータの収集と分析体制が不可欠です。センサーの設置位置や測定項目の選定、データの保存方法、分析結果の活用方法まで、体系的に整備する必要があります。
また、収集したデータを農作業にどう活かすかの運用ルールも重要で、データがあっても使わなければ意味がありません。最初は簡単な指標から始めて、徐々に分析の精度を高めていくことがポイントです。

「データに基づく農業」への転換は時間がかかりますが、継続することで成果につながる投資といえます。
熟練農家のノウハウとAIを併用する
AI技術は非常に有用ですが、熟練農家が長年培ってきた経験や勘を完全に置き換えるものではありません。AIデータと経験的な判断を組み合わせることで、より精度の高い農業経営が実現できます。
AIが病害虫のリスクを予測しても、最終的な判断は農家の経験に基づくことが重要です。また、地域特有の気候条件や土壌特性は、AIだけでは対応しきれない部分もあります。

「AIは道具、判断は人間」という考え方で、技術と経験の良いとこ取りをする感覚が大切です。
日本で進む農業AI導入事例10選と効果の実際

理論だけでなく、実際にAI技術が農業現場でどう活用されているかを知ることが重要です。日本全国ではすでに多くの先進事例が生まれており、成果は想像以上に素晴らしいものがあります。ここでは、注目すべき10の導入事例と具体的な効果を詳しくご紹介します。
自動収穫ロボット(AGRIST)
AGRIST株式会社が開発した自動収穫ロボット「L」は、AIが収穫に適した作物を判断し、人の手で行うような収穫作業が可能です。
今回新たに3軸の水平多関節アームを搭載し、収穫範囲が拡大。
引用元:AGRIST|2022年秋からのレンタルサービス開始に向けて自動収穫ロボット「L」市場投入モデル発表(最終閲覧日2025年8月26日)
AIの判断により最適な角度から収穫アプローチを行うことで、誤って枝葉を切ることなく「安心・安全・確実にピーマンを収穫する」ロボットを実現しました。
ピーマンやキュウリの収穫で実用化されており、人手不足解消と人件費削減、病気の早期発見機能も搭載されています。ほかにも特徴的なのが、ハウス内がぬかるんでいても障害物があってもワイヤー走行で対応できる点です。導入時点からフル稼働できる高いパフォーマンスが魅力です。
病害虫予測アプリによる収量増加(ミライ菜園)
ミライ菜園のAIアプリは、気象データと病害虫の発生パターンを学習し、最適な防除タイミングを農家に通知するシステムです。従来の予防散布から予測に基づく効率的な防除に変わることで、農薬使用量を30%削減しながら収量を15%向上させた事例があります。
AI予報を活用した防除により、若手ブロッコリー農家の収量が15%増加、ベテランキャベツ農家の収量が4%増加するなど、開発段階から大きな成果を上げています。
引用元:PR TIMES|愛知の農業DXスタートアップ 「ミライ菜園」、NEDOの「SBIR推進プログラム(連結型)」に採択(最終閲覧日2025年8月26日)
スマートフォンで簡単に使えるため、ITに慣れていない農家さんでも導入しやすいのが特徴です。データの蓄積により予測精度も年々向上しています。
人工衛星画像と田植え機を連携した事例(クボタ)

クボタは人工衛星からの画像データをAIで解析し、田植え機と連携した精密農業システムを開発しています。
KSAS対応田植機には、地図上のメッシュごとに施肥量の増減を設定できる可変施肥マップの機能が付いており、前年までのほ場内で収穫されたお米の食味・収量を確認し、可変施肥を行うことができますが、衛星画像を活用したザルビオのマップを読み込むことで、より精密な作業が可能になります。
引用元:KUBOTA|KSASのオープン化が「日本の農業の時計」を進める(最終閲覧日2025年8月26日)

「KSAS」とは、クボタが提供する農業向けのクラウドサービスです。ドローンや人工衛星からの生育データ連携、食味・収量センサー付きコンバインとの連携、可変施肥対応が可能です。
衛星データから土壌の状態や水分量を把握し、田植えの最適なタイミングと場所を特定することで、苗の定着率向上と収量増加を実現しています。GPS機能付き田植え機との連携により、自動運転での精密な植付けが可能で、作業効率も大幅に向上します。
この技術により、経験に頼らない科学的なデータに基づく稲作が可能になり、新規就農者でも高品質な米づくりができるようになりました。まさに次世代の稲作技術といえるでしょう。
ロボットトラクターで自動運転を実現(ヤンマー)
ヤンマーのロボットトラクターは、GPS技術とAIを組み合わせた完全自動運転を実現しています。事前にプログラミングした作業計画に従って、耕耘・播種・施肥を無人で行うことができ、作業精度も人間以上の高さを誇ります。
トラクターに乗車せず、タブレットで作業をコントロール。オペレーターは、近距離で監視しながら別の作業もできるので、大幅な省力化を実現できます。ひとりで2台のトラクターを操作することも可能(1台は有人)。
引用元:YANMAR|ロボットトラクター YT488R/498R/4104R/5114R(最終閲覧日2025年8月26日)
夜間や早朝の作業も可能で、農繁期の労働負荷を大幅に軽減できます。また、複数台同時運用により作業効率を飛躍的に向上させることも可能です。安全機能も充実しており、障害物を検知すると自動停止するため安心して利用できます。導入農家からは「24時間働いてくれる頼もしい相棒」との声が聞こえています。
AI×リモートセンシングで耕作放棄地を解析(サグリ)
サグリは衛星画像とAI解析技術を活用し、耕作放棄地の状況を詳細に把握するサービスを提供しています。植生指数(地表面の植生の被覆割合や植物の活性度を示すもの)や土地利用状況の変化を自動で検出し、農地の利用可能性を評価することで、耕作放棄地の有効活用を支援します。
広範囲の農地の耕作放棄地率(※)をすばやく把握でき、膨大な時間と労力がかかる農地のチェック業務を効率化します。パトロール人員の割り当てや、進捗・判定結果の管理もできます。
引用元:Sagri|アクタバ(最終閲覧日2025年8月26日)
※衛星データのAI解析結果を元にした、耕作放棄地である可能性を示す値

僕が住む大館市でも耕作放棄地が増えているため、このような技術があれば地域活性化につながるなと感じます。
自治体や農協が導入することで、地域全体の農地管理を効率化し、新規就農者への農地紹介もスムーズに。データに基づく客観的な農地評価により、適切な土地活用計画の立案が可能になります。
ドローン×AIで農薬散布を最適化(オプティム)
オプティムは、世界初のピンポイント農薬散布技術を開発。病害虫が検知された箇所のみにドローンで農薬を散布することで、通常栽培で使用する農薬の量の9割以上の削減も実現しました。
すでに実用段階に入っており、大豆では慣行栽培で使用する農薬量に対し、99%※1の削減することに成功しています。
引用元:OPTiM|テクノロジー(最終閲覧日2025年8月26日)
ドローンで撮影した画像をAIがディープラーニングで解析し、検出対象を特定して的確に散布する仕組みです。これまでの重労働から解放され、高齢化や担い手不足などの農業課題の解決にも貢献しています。コスト削減と環境負荷軽減を同時に実現する革新的な技術として、全国で導入が拡大しています。
IoTとAIで施設栽培を自動制御する事例(クレバアグリ)

クレバアグリのシステムは、ハウス内の温度・湿度・CO2濃度・土壌水分などをリアルタイムで監視し、AIが最適な環境制御を自動で行います。作物の成長段階に応じた細かな調整が可能で、収量向上と品質安定を実現しています。
また、異常値を検知すると即座にアラートが送信されるため、トラブルの早期発見・対応も可能です。データの蓄積により、より精密な制御パターンの学習も進んでおり、年々システムが進化しています。
AIによる養豚管理のスマート化(Eco-Pork)
Eco-Porkは、AIカメラとセンサー技術を活用した革新的な養豚管理システムです。豚の行動パターンや健康状態をAIが24時間監視し、病気の早期発見や最適な給餌タイミングを自動判断。豚舎内の環境データも同時に監視し、空調システムと連携した最適な飼育環境の維持を実現しています。

動物の飼育までAIで管理できるんですね…すごい…!
導入農場では、病気による損失が大幅に減少し、飼料効率も向上したとの報告も。
空胎の母豚情報をリアルタイムで確認をすることができるため、飼料の無駄食いを減らすことができるようになりました。
引用元:Eco-Pork|Porkerユーザーの声(最終閲覧日2025年8月26日)
従来は人間の経験と勘に頼っていた養豚業において、データに基づく科学的な管理手法を提供することで、生産性向上と動物福祉の向上を両立させています。
AI画像解析で遠隔生育状況を把握(スカイマティクス)

スカイマティクスは、ドローンで撮影した圃場画像をAIで解析し、作物の生育状況を詳細に把握するサービスを提供しています。植生指数の変化から収量予測や病害虫の早期発見が可能で、広大な農地でも効率的な管理を実現。

広い圃場だと、病害虫を目視で発見するのは時間と手間がかかりますからね。
クラウド上でデータを処理するため、現場にいなくても生育状況を確認でき、適切で迅速な管理判断が可能に。
「水稲」の色味診断:追肥前に診断することで、追肥が必要な圃場の特定、圃場の中で生育が遅れている場所の特定が可能です。部分施肥にお役立て頂けます。
引用元:SkymatiX|葉色解析サービス「いろは」価格改訂のお知らせ(最終閲覧日2025年8月26日)
特に大規模農業経営では、人力での見回りが困難な広い圃場の状況を一度に把握できるメリットが大きく、作業効率の大幅な向上が期待できます。データの蓄積により予測精度も継続的に改善されています。
無人受粉ロボットで自動栽培を促進(HarvestX)

HarvestXは、AI技術を搭載した無人受粉ロボットを開発し、イチゴなどの施設栽培における受粉作業の完全自動化を実現しています。
低コストで高精度な授粉と、ハチを用いない衛生的な環境の確保により、食品製造の現場に最適なイチゴの植物工場を実現します。
引用元:HarvestX|製品情報(最終閲覧日2025年8月26日)
カメラとAIで花の開花状況を判断し、最適なタイミングで受粉作業を行うことで、手作業と同等以上の受粉率を達成しています。

手作業やハチを使った受粉では、どうしても品質にばらつきが出てしまうようです。
24時間稼働可能なため、受粉の最適な時間帯を逃すことなく、安定した果実生産が可能です。また、受粉データの蓄積により、より効率的な受粉パターンの学習も進んでいます。労働集約的な受粉作業からの解放により、農家は他の重要な管理作業に集中できるようになるのが大きな魅力です。
AIを活用したスマート農業に関するよくある質問

AIを活用したスマート農業について「本当に導入できるのか?」「安全性は大丈夫なのか?」といった疑問をもつ方も多いでしょう。ここでは、スマート農業導入を検討している方が抱きがちな5つの重要な疑問について、詳しくお答えします。
スマート農業とはどんな技術や仕組み?
スマート農業とは、AI(人工知能)に基づく技術を活用して農作業や農業経営の効率化・付加価値向上を図ることです。
従来の経験と勘に頼る農業から、データに基づく科学的なアプローチへの転換が核心といえるでしょう。

僕はマルチシートを設置するための自動運転のトラクターに乗ってことがありますが、効率も作業品質もとても良いなと感じました。
スマート農業の技術により、労働負担軽減と生産性向上を同時に実現できるのがスマート農業の特徴です。
小規模農家でもAI導入は可能なのか?
小規模農家でもAI導入は十分に可能で、実際に多くの成功事例があります。2025年度から「スマート農業技術活用促進集中支援プログラム」など新たな補助金が新設・拡充されており、初期投資のハードルが大幅に下がっています。
また、クラウド型のAIサービスやリース・レンタルを活用すれば、初期費用を安価におさえられます。重要なのは「小さく始めて大きく育てる」という考え方で、無理のない範囲からスタートすることです。
スマート農業の効果は規模によって違う?
スマート農業の効果は規模により異なりますが、小規模農家でも十分なメリットを得られます。大規模農業では自動化による労働コスト削減効果が大きく、ROI(投資対効果)も高くなる傾向があります。
一方、小規模農家では品質向上や収量安定化による単価向上効果が特に大きく、少ない投資でも着実な効果が期待できます。規模に関係なく「何のためにAI技術を使うのか」という目的を明確にすることが重要です。
データの安全性やプライバシーは大丈夫?
農業データの安全性は重要な課題として認識され、対策が進んでいます。スマート農業におけるサイバーセキュリティ対策の高度化が求められ、AIやブロックチェーン技術の導入が重要とされています。また、スマート農業情報の国外流出事件を受けて、データ管理体制の強化が進められています。

個人や組織でもできる対策があるので、できることから実施していきましょう。
信頼できるシステム提供者を選び、データの暗号化やアクセス制御を徹底することが必要です。
導入後のメンテナンスやサポート体制は?
多くのスマート農業システムでは、導入後の充実したサポート体制が整備されています。機器メーカーや販売会社による定期メンテナンス、24時間対応のヘルプデスク、現場での技術指導サービスなどが提供されており、ITに詳しくない農家でも安心して利用できます。
また、近隣農家同士の情報共有グループやユーザー会なども活発で、実践的なノウハウを学べる環境が整っています。
空知管内においては、市町や農業関係機関・団体、生産者が一体となったスマート農業の推進体制の構築が進んでおりますが、スマート農業のさらなる加速化を図るべく、空知総合振興局では令和3年4月に「空知スマート農業推進室」を発足しました。
引用元:北海道空知総合振興局|空知スマート農業推進室(最終閲覧日2025年8月26日)

機器やシステムを導入する前に、メーカーのサポート体制を確認するのが大切です。
AI活用が広げるスマート農業の未来と可能性
本記事では、次のような方に向けてスマート農業の概要からメリット・デメリット、活用事例まで解説しました。
本記事のポイントは、次の通りです。
AIを活用したスマート農業は、従事者の高齢化や後継者不足により人手不足が懸念される日本の農業を変革する重要な技術です。単なる作業の自動化から意思決定の自動化へと進化し、経験と勘に依存していた農業がデータドリブン(データ手動)で最適化される時代が到来しています。

これから農業人口がどんどん減っていくと予測されるなかで、可能なものから取り入れて作業負担や長期的コストの軽減を図りたいものです。
初期コストや技術習得の課題はありますが、補助金制度を活用し段階的に導入することで、持続可能で効率的な農業経営の実現が期待できるでしょう。
コメント