「きりたんぽ」は秋田県を代表する郷土料理ですが、歴史や正しい作り方を知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、次のような悩みをもつ方に向けて、きりたんぽの基本知識から家庭での作り方まで、秋田県の食文化を詳しく解説します。

「きりたんぽを作るのはむずかしそう」と思っている方も、家庭で本格的な味を再現できます。
秋田の伝統が息づく郷土料理の魅力を、ぜひ本記事で発見してください。記事のポイントは次の通りです。
きりたんぽとは秋田県大館市の郷土料理

きりたんぽは秋田県大館市を中心とした県北エリアで親しまれている伝統的な郷土料理です。新米で作ったご飯を竹輪のような形にし、囲炉裏で焼いて作る素朴さが特徴。

現在では全国的に知名度が高まり、秋田を代表するグルメとして多くの人に愛されています。

今でも冬になると、多くの家庭で食べられている、秋田県民のソウルフードです。
新米の季節や地域行事で食べられる郷土料理
きりたんぽは秋田の新米の季節である秋から冬にかけて、地域の行事や家庭で食べられる季節料理です。新米が収穫される10月から、翌年3月頃までがもっともおいしい時期とされています。この時期に家族や地域の人々が集まって囲むのが、伝統的な食べ方です。

新米で作られたきりたんぽは、もちもちしておいしいですよ!
収穫祭や年末年始の家族団らん、農閑期の楽しみとして親しまれています。また、きりたんぽ鍋は体を温める効果があるため、寒い秋田の冬には欠かせない料理です。きりたんぽは単なる料理ではなく、秋田の季節感と地域のコミュニティを結ぶ大切な食文化の一部なのです。
主な伝承地域は大館・鹿角エリア
きりたんぽの発祥地は秋田県大館市で、現在も大館・鹿角エリアが主要な伝承地域となっています。良質な「あきたこまち」、「比内地鶏」の発祥地でもあるため、きりたんぽ作りに最適な食材がそろっている地域です。


あ、僕が住んでいるのは大館市です。秋田犬発祥の地としても知られています。大きすぎてちょっと怖いですが(笑)
大館・鹿角地域では、今でも各家庭に独自の味が受け継がれ、秋田県内でも特に本格的なきりたんぽを味わえます。
定番は比内地鶏と野菜を使ったきりたんぽ鍋
きりたんぽの最も代表的な食べ方は、比内地鶏と季節野菜を煮込んだ「きりたんぽ鍋」です。

ちなみに、「きりたんぽ」と「きりたんぽ鍋」を同じものだと思っている人も多いかもしれません。厳密にいうと、「きりたんぽ」はお米で作る棒状の食べ物、それを入れた鍋がきりたんぽ鍋です。

比内地鶏は日本三大地鶏のひとつで、秋田県の特産品であり、その上品な出汁がきりたんぽの素朴な味を引き立てます。家庭や地域によって若干の違いはありますが、きりたんぽ鍋には次のような食材が入っています。
比内地鶏のスープに醤油ベースの味付けをし、野菜の甘みときりたんぽの香ばしさが調和した優しい味わいが特徴です。秋田の食文化を象徴する料理として、県外からの観光客にも高く評価されています。
香ばしい「味噌つけたんぽ」という食べ方も
きりたんぽ鍋以外にも、焼いたきりたんぽに甘味噌を塗って食べる「味噌つけたんぽ」という素朴な食べ方があります。

味噌つけたんぽの特徴は、以下の通りです。

甘辛いみそが最高です!軽食的な感じで、個人的にはきりたんぽ鍋より好きかも…
味噌つけたんぽは、山仕事の合間に手軽に食べられるよう生まれた伝統的な食べ方で、きりたんぽの原点を感じられる食べ方として今も愛され続けています。
きりたんぽの歴史と由来

きりたんぽの歴史は江戸時代後期までさかのぼり、秋田県北部の山深い地域で生まれました。
江戸(えど)時代に藩(はん)の視察(しさつ)に来た南部藩(なんぶはん)の
引用元:農林水産省|きりたんぽについて教えてください(最終閲覧日2025年9月24日)
殿様(とのさま)を、きりたんぽでもてなしたという話があります。
当時の厳しい山仕事のなかで、効率的に栄養を摂取するための工夫から誕生した料理です。名前の由来も興味深いエピソードがあり、秋田の人々の知恵と文化がつまった伝統料理といえます。
発祥は200年以上前の山仕事の食事
きりたんぽは約200年前の江戸時代後期、秋田県北部の山間部で働く木こりや狩猟者の携帯食として誕生しました。
そもそも「きりたんぽ」の発祥は、この大館・北鹿地方で、その昔、炭焼きや秋田杉の伐採のため山籠りした人たちが、山小屋で残り飯やおこげを練ってトリ鍋に入れたり、味噌を塗って食べたのが始まりと伝えられています。
引用元:大館市|きりたんぽ(最終閲覧日2025年9月24日)
山仕事は長時間におよぶため、持ち運びしやすく栄養価の高い食べ物が必要でした。また、山中では火を使える場所が限られており、簡単に調理できる工夫が求められていたのです。きりたんぽには以下のような特徴があるため、携帯食として重宝されていたのです。
実用的な理由から生まれたきりたんぽは、厳しい自然環境で生き抜く秋田の人々の生活の知恵が凝縮された料理なのです。
名前の由来は槍の刃先を覆う「たんぽ」
「きりたんぽ」という名前は、ご飯を巻きつけた竹の棒が、槍の穂先を覆う「たんぽ」に形が似ていることに由来しています。
江戸時代に使われていた槍には、刃先を保護するための綿や布を詰めた袋状の「たんぽ」というカバーが付けられており、形状が似ていたため名付けられたとされています。

所説あって、ガマの穂を「短穂(たんぽ)」と呼んでいたからという説もあります。
鍋に使うときには食べやすい大きさに切ることから、「切りたんぽ=きりたんぽ」となり、今でも親しまれる名前となりました。身近にあった武具(もしくは植物)から名前を取ったエピソードは、当時の人々の暮らしぶりや歴史を感じさせる興味深いものです。
きりたんぽの材料と作り方

きりたんぽは、家庭でも手軽に作れる郷土料理です。本格的な比内地鶏を使ったきりたんぽ鍋から、手軽な味噌つけたんぽまで、東京でも手に入る食材で秋田の味を再現できます。ここでは、初心者でも失敗しない作り方のコツと、必要な材料を詳しく解説します。
きりたんぽ鍋に必要な材料(比内地鶏・野菜など)
きりたんぽ鍋に必要な材料を大きく分けると、きりたんぽ、比内地鶏、季節野菜、調味料の4つです。本場秋田の味を再現するには、それぞれの食材の役割と特徴を理解することが大切です。4人分を作る際に必要な材料は次の通りです。
家庭によって入れる野菜が若干違ったりしますが、基本は上記の通りです。食材をそろえて、家庭でも本格的な秋田のきりたんぽ鍋を楽しみましょう。

ただ、きりたんぽ自体は秋田県民でもなかなか自作しません。地元のスーパーなどで売っているものを使うのが一般的です。スープも自信がなければ、市販のもので一度試してみるのがおすすめです。
家庭でできるきりたんぽ鍋の作り方
きりたんぽ鍋は、以下の3ステップで簡単に作れます。手順を守ることで、比内地鶏の旨みを最大限に活かしたおいしい鍋に仕上がります。
- STEP1出汁づくり
比内地鶏のガラを水からじっくり弱火で煮て、鶏だしをとる。(70~75℃程度でアクをとりながら約3時間が理想)
- STEP2下準備
- 炊きたてのご飯をすり潰して(粒が半分残る程度)棒に巻き、表面がきつね色になるまで焼いてきりたんぽを作る。
- ごぼうはささがきにして水にさらし、長ねぎは斜め切り、舞茸などのきのこ類は小房にばらす。
- 鶏肉は一口大に切り、せりはざく切りにする。糸こんにゃくも食べやすい長さに切る。
- きりたんぽは食べやすい大きさ(7~10cm程度)に斜めに切る。
- STEP3煮込み
- 鍋に出汁を入れて沸騰させ、鶏肉とごぼうを加えて煮る。
- 火が通ったら舞茸や糸こんにゃく、長ねぎを加えて軽く煮る。
- 最後にきりたんぽを入れて2~3分煮たら、せりを入れてひと煮立ちさせる

きりたんぽを最初に入れると、煮えすぎて崩れてしまうので注意してください。せりは根っこごと入れる家庭もあります。僕も根っこごとが好きです。
市販の比内地鶏スープを使う際は、使用方法をよく読みましょう。上記の手順で本格的なきりたんぽ鍋が完成し、家族や友人と秋田の郷土料理を楽しめます。
香ばしい味噌つけたんぽの作り方
味噌つけたんぽは、焼いたきりたんぽに甘味噌をぬるだけの簡単な郷土料理です。きりたんぽ本来の香ばしさと、米の甘みをダイレクトに味わえる伝統的な食べ方でもあります。必要な材料と作り方は次の通りです。

調味料の配分は、好みに合わせて変えてOKです!
- STEP1甘味噌づくり
- 味噌、砂糖、みりんをボウルに入れてよく混ぜる。
- レンジで少し加熱してなじませるとぬりやすい。
- STEP2焼き工程
- 炊きたてのご飯をすり潰して(粒が半分残る程度)棒に巻き、表面がきつね色になるまで焼いてきりたんぽを作る。
- きりたんぽをトースターやグリルで表面に焼き色がつくまで焼く。
- 焼き上がったきりたんぽに甘味噌だれをたっぷりぬる。
- STEP3仕上げ
- 味噌をぬったきりたんぽを再びトースターで、味噌が香ばしく焦げ目がつくまで焼く。
- 余った味噌は冷蔵保存可能。

甘味噌のタレが何ともいえずおいしいんですよね~!個人的には鍋より好きかもしれません(笑)
おやつ感覚で気軽に楽しめる味噌つけたんぽは、きりたんぽ初心者にもおすすめの食べ方です。
きりたんぽを守り伝える秋田の取り組み

きりたんぽは秋田県が誇る郷土料理として、官民一体となった継承活動が行われています。本場の味を守るための品質管理から、観光資源としての活用、次世代への文化継承まで、多角的なアプローチで伝統を未来につなげる取り組みが展開されています。
ここでは、きりたんぽを守るために行われている、秋田県内の取り組みについてまとめました。
秋田名物本場大館きりたんぽ協会の活動
本場大館きりたんぽ協会は、きりたんぽの品質維持と伝統継承を目的とした公式組織です。
秋田名物本場大館きりたんぽ協会では、本場大館きりたんぽの伝統の味を守り、末永く伝承するために研鑽を続け、地場産業の向上や観光の振興に努めます。
引用元:大館市|秋田名物本場大館きりたんぽ協会(最終閲覧日2025年9月25日)
商業化にともない品質のばらつきが生まれるなか、本場の味と製法を守り、消費者に正しいきりたんぽの知識を伝える必要が出てきました。

「本場大館きりたんぽの条件」というものが定められ、使用する材料に制限があります。
上記のほかにも、糸こんにゃくとサトイモ、食用菊の使用が認められています。
本場大館きりたんぽ協会のページ(市役所ページ内)では、本場のきりたんぽの作り方を動画で公開しています。
協会の活動により、全国どこでも本格的な大館のきりたんぽを味わうことができ、伝統的な食文化が次世代に継承されています。
大館市で開催される本場きりたんぽまつり
毎年秋に開催される「本場きりたんぽまつり」は、秋田県最大級のきりたんぽイベントです。

新米の季節に合わせて地域の食文化を全国にPRし、観光振興と伝統継承を同時に推進するイベントとして企画されています。まつりの主な内容は、次の通りです。
開催時期 | 毎年10月の第2週の週末 |
開催場所 | 秋田県大館市のニプロハチ公ドーム(旧大館樹海ドーム) |
主催 | 大館食の祭典協議会 |
来場者数 | 約13万人(ピーク時)、近年は6〜7万人規模 |
きりたんぽグランプリ | 大館市内外から参加の10店舗以上が出店し、来場者の投票で「No.1きりたんぽ」を決定 |
たんぽ一万本焼き | 大規模なきりたんぽの焼きイベント |
体験イベント | 大館曲げわっぱ制作体験、消防車乗車体験、子ども向けプレイパークなど |
ステージイベント | 地元アーティストやご当地ヒーローのパフォーマンス |
グルメ | 新米で作られたきりたんぽと比内地鶏をはじめ、桃豚などのグルメが多数出店 |
イベントには数万人が訪れる人気の観光資源となり、きりたんぽの魅力を全国に発信する重要な役割を果たしています。

僕は大体味噌つけたんぽとビールで乾杯しています(笑)そして、写真は1枚しかありませんでした…今年行ったらたくさん撮ってきます!

体験教室や観光ツアーで楽しむきりたんぽ作り
秋田県内では、観光客向けのきりたんぽ作り体験教室や専門ツアーが年間を通じて開催されています。実際に手を動かして作ることで、きりたんぽの歴史や文化をより深く理解してもらうことが目的です。


所要時間は約2時間程度で、作ったきりたんぽは持ち帰りも可能です。きりたんぽ手作り体験によって、参加者は大館市の伝統的な食文化に触れ、口コミやSNSを通じて認知度向上に大きく貢献しています。
学校給食や飲食店での提供と継承
きりたんぽは学校給食と地元飲食店での提供を通じて、日常的な食文化として次世代に継承されています。子どもの頃から慣れ親しむことで、郷土料理としてのアイデンティティを育み、将来の担い手を育てています。


「鍋っこ遠足」で、みんなできりたんぽ鍋を作って食べる学校もあります。
地元飲食店でもきりたんぽ鍋の提供が盛んで、地域の食文化を普及・継承する役割を果たしています。大館市内できりたんぽを提供するお店は、主に次の通りです。
日常的に食べられる環境が整い、きりたんぽは単なる郷土料理を超えて、秋田県民の食文化に深く根ざした存在となっています。また、観光客やインバウンド向けの重要な観光資源にもなっているのです。
まとめ|きりたんぽは秋田を代表する郷土料理
本記事では、次のような方に向けて、きりたんぽ発祥の歴史、比内地鶏を使った本格的な作り方まで詳しく解説しました。
記事のポイントは次の通りでした。
200年以上受け継がれる伝統料理の背景を知ることで、きりたんぽがよりおいしく感じるはずです。まずは家庭で味噌つけたんぽから始めて、秋田の食文化に触れてみませんか?新しい食の楽しみが広がり、友人との会話も盛り上がることでしょう。

秋田に来た際は、ぜひ一度食べてみてくださいね!そして、僕も待っています(笑)